ぬる湯ま

よく錆びます。

散文、1月。

 

 

 

 

電車にはしゃいでしまうのがやめられない

 先日、鉄道のDVDを閲覧する機会があった。新幹線、特急電車、ひいては通勤電車などに至るまで、鉄道のオタクであろうとなかろうと、物心つくような年頃に一度は見たことがあるであろう、いわゆる「のりものビデオ」である。我々が求めたのはそれらの最新版ではなく、一昔前に販売された、それこそ私たちが幼少の頃に観ていたくらいの世代の映像であった。

 もちろん、映像に収められた列車たちが自分世代の懐古欲につよく刺さったことは言うまでもない。500系のぞみ、いしづち・しおかぜの旧塗装、タンゴエクスプローラー、エーデル鳥取、パノラマデラックス、、、懐かし車両は枚挙に暇がない。酒もよく進んだ。だが、私が語りたいのはそこではなく、ある「てっちゃん」の話である。

 

 とある作品に2人の登場人物がいた。「駅員さん」と、鉄道が大好きな少年「てっちゃん」である。鉄道の映像と共に、2人のやりとりが展開されていく、そんな構成であった。

 この「てっちゃん」が曲者だった。一見、駅員さんの鉄道解説に対し丁寧なお礼を述べることが出来る程の礼儀正しい子供であるのだが、何を隠そう、電車にめちゃくちゃはしゃぐのだ。

 カーブにそって曲がる列車を見ては「うわぁ~カーブだ!!」、鉄橋を走る列車を見ては「うわぁ~鉄橋だ!!」、列車がすれ違えば「すれ違いだ!!!」、遂には走行する列車を見て「走ってる走ってる!!!!」と言い放つ場面すらあった。もはや走ってるだけで絶頂なのである。私たちは一連の流れを面白がりながら眺めていた。

 だがそれは、腹の底から笑い切ることの出来ない事実を孕んでいた。薄々わかっていたことだった。電車が走ってきて「うわぁ~!」とはしゃぐ姿。・・・これは完全に私自身ではないか。

 

 内輪な話だが、私と旅行に出かけたことがある方はご存じだと思う。遠出などで浮足立っている時、私は電車を見かけると「あっ!」とか「おっ」とか「〇〇系だ!」「うおぉ~~~」とかいって声に出てしまう癖がある。行く先に線路が見えれば列車が走って来ないか凝視してしまうし、どこからか走行音がすればそちらに目線がいく。実際に車体が見えると声が出る。もちろん一人で出かけている時にそのような声を出すわけにはいかないが、心の中では「〇〇系がおる!!かっこいい~~」といったような気持で満たされている。要は走ってくる電車を見ると簡単にテンションが上がってしまうのだ。

 

 さてこれが「てっちゃん」のような少年であれば可愛らしいねで済むべきところだが、やっているのはとうに成人を迎えた異常独身男性である。年相応という言葉も忘れ、電車の往来に声を出して一喜一憂するのはいかがなものか。お前は落ち着きのある嗜み方を知らぬまま歳を食い、子供のままはしゃいでいる成長のない人間だ。そう戒められているような気持ちになった。そろそろ自分の振る舞いを改めなければならない。映像を見て笑いつつも、どこか重い感情を背負わずにはいられなかった。

 

 先日、用事があり東急東横線の走るエリアへ出かけた。

 

 東横線目黒線が並走する田園調布~日吉では、それぞれの路線を走る電車が頻繁に往来する。また東横線には直通先のみなとみらい線東京メトロ副都心線西武池袋線東武東上線の車両が、目黒線には東京メトロ南北線埼玉高速鉄道線都営三田線の車両が乗り入れ、走行する車両のバリエーションは実に豊かだ。

 端的に言って、めちゃくちゃはしゃいでしまった。数本に一本というレベルで色んなカラーリングの電車がやってくるのだから、全然飽きが来ない。東急の特急電車が通過したかと思えば今度は逆方向から副都心線の新型車両が、ほどなくしたら反対から西武線の車両が、あっこんどは東武の50070系だ!!お~~~相鉄直通の試運転電車も走って来た!!!!! 都営三田線の新車!!カッコいい~~~~~~!!!!!!! ・・・とまぁ、心の中ではこんな具合だった。

 

 果たしてこの癖を携えたまま歳を取っていくべきかどうか、時折不安になることがある。でも結局止められないんだろうな。楽しいんだもん。

 

 

最近見たアニメ

dic.nicovideo.jp

 ゲーム「NieR:Automata」を原作としたテレビアニメ「NieR:Automata Ver1.1a」という作品を最近見始めた。原作ゲームをプレイしたことはなく、前知識は一切なし。ただ、ゆゆゆシリーズの音楽を担当したMONACAの人が関わっているというのが、視聴のきっかけだった。

 アニメを見てみると確かに、ゆゆゆで聴いたことあるような雰囲気の劇伴が流れている。が、時系列としては(ゲームの過去作を含めれば)ニーアの方が先であり、「ゆゆゆのBGMがニーアっぽい」と表現する方が正しい。思えばニコニコ動画でゆゆゆを観ていた時にも、BGMの雰囲気がニーアっぽいというようなコメントが多くあった気がする。

 とはいえ私個人としてはゆゆゆの方を先に履修していたこともあり、正直「ゆゆゆで聴く雰囲気のBGMが流れてる!」といった印象を抱きながら第1話を眺めていた。ゆゆゆの劇伴に対しては、日本神話的な世界観と、和風っぽい音色やコーラスが用いられる雰囲気の劇伴がよく似合っているなと感じていたのだが、ニーアのアニメを見ればなるほど、ゆゆゆとは雰囲気が全く異なる、機械やアンドロイドがバチバチに戦うような作品にも、この手のBGMが似合うんだなと思った。なんならニーアの方が先という事に、私としてはどこか不思議な印象を抱いた。

 コメントを眺めていると、どうやらアニメ内の演出やBGMのチョイスは原作ゲームに凄く忠実に沿っているらしく、ゲーム経験勢にとっては刺さる場面も少なくないらしい。いかんせん私は未履修なので、その辺りの感覚は掴み切れないが、「この要素を拾うのか...!」とコメント欄が賑わう様子は見ていて楽しい。原作ゲームもやってみたいかなという気分になってくる。

 各話の最後に流れる「にんぎょうげき」は、たとえ元ネタを知らずとも、本編との温度差に度肝を抜かれる。脚のぷらっぷらさ加減がすき。